i k e d a a y a k oikedaayako
セツ・モードセミナー卒業後、独自で活動。国内外で個展、アートフェア参加のほかにファッションブランドとのコラボレーションなど多岐。日常の生活が表現したいものや伝えたいことに溢れ、それらを目に見えるものとしてつくる術-すべ-を持っているという幸運を、大切にしてゆきたい。
INTERVIEW
あなたにとって、美術 / 制作することとは何でしょうか。
家族や友人や恋人と、どれだけ心が通じていても「自分」は永遠に、自分だけ。
言葉や表情や行動に表したり、一度何かに変換しないことには、自分の内側の気持ちを、自分以外の誰かに伝えることはむずかしい。
私にとって絵を描くことは、その変換作業のひとつであり、ひとに絵をみてもらうことは、会話することとよく似ています。
「気持ち」といっても厳密には、記憶、願い、フェティシズム、空想、理想、などなど、描く絵によって様々な要素が織り混ざり、それらは、自分という入れ物の中に時間や経験と共に増していき、あるときどこかの出口を通って、衝動的に流れ出る。
出口が見つからないまま入れ物がいっぱいになると、壊れてしまう。
そうならないために、みんな話したり、書いたり造ったり、表現しているのではないかな、と思います。
いつから美術に興味を持たれたのでしょうか。
物心ついた頃から、他のどんな遊びよりも、絵を描くことが好きでした。
美術作品に限らず美しい、心地良い、揺さぶられる、というような刺激を与えてくれるものに出逢うと、よく観察していました。
絵を描くことは独学で、「美術に興味がある」と思うことは、昔も今もあまりないように思います。
アートに限らず影響を受けたクリエイターはいますか。
音楽も、私に感動を与えてくれるもののひとつで、子供の頃から親や兄弟の影響もあり、いろいろな種類の音楽を聴いていました。
特に惹かれる曲や歌は、延々とリピートして聴いたり、耳コピして口ずさんだり。
時には得体の知れぬ感動に襲われて、涙することも。一番古い記憶は、小学生の頃に聴いたホルストの「木星」、Björkの「ハイパーバラッド」など。
何でもない瞬間に、人から涙を溢れさせるパワーを持った音を作れるって、なんてすごいことなのだろうと、音楽という存在にも、そういったクリエイターにも、ずっと憧れがあります。
転機となった作品があれば教えてください。
2020年、日々のほとんどの時間を自宅で過ごすようになった頃、自然と自分自身や、自分のごく身近な存在に、意識が集中していきました。
それに伴い画材を、アクリル絵の具から、環境や人体に影響の少ないオーガニックの水彩絵の具に変え、その後、住む場所も都心から自然により近い場所へ移し、描く絵が変わりました。
これまでも、暮らす環境や経験に伴って変化はありましたが、この時は、作品を描く際にものを観る角度や、表現するときの心の在り方などの、土台のような部分から変化を感じ、転機となったと思います。
その他には、2014年に開催した個展「vivid reality」、2015年のベルリン滞在中から制作を始めた「Little Perchta(リトルペルヒタ)」シリーズは、私の中での、節目となっています。
今後、作家としてどのような活動の展開を考えていらっしゃいますか。
身を置く環境や絵の題材などについては、引き続き、より自然に関わる形で制作をし、「絵を描く」ということは変えずに、これまでとは違った表現方法を探ってゆきたいと思います。
今後の展望や今挑戦されていることなどありましたら、お聞かせください。
支持体として、リサイクルの紙を自作してみたいと思い、最近紙漉きに挑戦しています。
また、2021年の2月よりブログを開設し、日常の暮らしなどを綴っています。これまで、描くテーマはほとんどが、ごく個人的なことでありながら、展示会場で対面でのお話以外では、作品解説のようなことを避けてきていたので、作品からは見えない人間性を、もっと身近に感じられる場所が欲しいと思い、始めました。
絵を描くことや自分らしく生きることで、誰かの心を動かせたり、感動させることができたら、それは、私にとっての夢の実現です。