音羽しょうこShoko Otowa
「言葉にできない繊細な感情や思いをすくい取り、色の重なりに紡ぐ」、「鑑賞者の心が果てない遠くへ自由に解き放たれるような奥行きのある作品作り」をテーマに2013年から油彩画家として活動。3年間のフランス滞在を経て2021年からは下地の質感や絵の具の盛り上がり、筆の軌跡といった「物としての絵画の美しさ」に重きを置いている。岩手県出身。
INTERVIEW
あなたにとって、美術 / 制作することとは何でしょうか。
油絵は自分らしく生きるためのパートナーだと思っています。
言葉を尽くしても伝わらないと思ったものや、誰かに伝わらなくても確かに自分の中には存在している思いなどを、綺麗なものに昇華してくれる存在です。
いつから美術に興味を持たれたのでしょうか。
幼稚園の頃から絵画を見ることが好きでした。
描くことも好きで、毎年なにがしかの絵画コンクールで賞をもらうような子供でした。
小学校高学年のころから水彩画を描くときに違和感をおぼえるようになりましたが、中学の選択教科(美術)で油絵と出会い「これだ、この画材でずっと描きたかった」と気付きました。
高校でも選択教科で美術を選んだところ携帯用の油絵セットを購入することになり、それからは自宅でも油絵を描くようになりました。
アートに限らず影響を受けたクリエイターはいますか。
舞台演出家の蜷川幸雄が好きです。
「身毒丸」という作品はどぎつい内容なのですが美しく悲しい作品に昇華されているところに魅入られました。
蜷川さんはすでに故人ですが、今でもお会いしてみたい方です。
転機となった作品があれば教えてください。
2021年にフランスから帰国してから「人魚」という2枚の連作を描きました。
1枚目は白べースに複数の水色とタコーイズブルーを置いた作品。2枚目は下地と絵の具の盛り上がり・筆致だけでドラマを作り上げた、真っ白な作品でした。
それまでは青の濃淡、青の重なり合いだけで勝負をしていましたが、マチエール(下地の素材、量、形)から物語をつくれるフェーズに入ったことに気付けました。
それからはより制作が楽しくなりました。
今後、作家としてどのような活動の展開を考えていらっしゃいますか。
今後の展望や今挑戦されていることなどありましたら、お聞かせください。
2023年に画業10周年を迎えます。
今後は個展を中心に発表していくと思います。
いま決まっている予定としては、今年10月にグループ展(代官山)、来年2023年3月に個展(銀座)があります。
マチエール(下地)からドラマを創る作風をもっと深めていくつもりです。
マチエールとお友達になるというか。
一見ミニマルでありながら、ドラマチックな絵を創っていきたいです。
そのためにも「マチエールの上に絵の具をのせる」ということについて、自分の中の文法をもっと洗練させていきたいです。
溶き油の選択ひとつで作品の物語が大きく変わってしまうので、そのつどその作品にふさわしい、その作品が一番輝ける形を探していきたいです。
とにかく今は描くことが楽しいので、沢山描いて研究したいです。
以前、「実物を見て初めて『ああそういうことか』とわかった」と言われたことがありました。
色の重なりや、マチエールの質感から感じ取る印象のことを言っていたのだと思います。
確かに私の作品は写真にしづらいです。
層を重ねているせいでピントがなかなか合いませんし、複数の青が一色に写ってしまうこともあります。
銀色の絵の具を使っていたときは、角度によって反射が変わるので写真選びに迷いました。
なので実物を見に来てもらえる画家になりたいです。
なにはともあれ、まずはECサイトを通じて、抽象画が好きな人にもっと作品を知ってもらえたらいいなと思います。
ずっと温めている展示の企画があります。
インスタレーションというジャンルにあてはまるものかもしれません。
なかなかやれる場所と機会がないのでいつかやれたらいいなと思います。