芝浜駅
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2020年春に暫定開業予定であるJR東日本の新駅の名称が、「高輪ゲートウェイ」に決まった。駅名は公募制を採用しており、応募数では1位が「高輪」、以下「芝浦」「芝浜」と続いていたにもかかわらず、130位だったこの名前が選ばれている。
当然その不透明な決定プロセスには釈然としないが、公募案にもあるように、新駅の辺りは落語「芝浜」の舞台だ。「芝浜」は明治の落語家・三遊亭圓朝の作とされる古典落語であり、裏長屋に住む貧乏暮らしの魚屋が、芝の浜辺で四十二両という大金の入った革財布を拾ったものの、女房はそれを夢だと言い張る───そんな夫婦の人情噺である。
この名作のタイトルを引用しなかった、否、できなかったのは、不動産ビジネスの問題でもあるだろう。地名によって地価は変わってくるからだ。不動産として、そこは断じて貧乏な江戸下町のイメージであってはならず、高級感漂う山の手の一等地でなければならなかった。
さらに言えば接続されたカタカナ語は、郊外から都心へ、ニュータウン的な感性が逆流入していることを示唆するのではないか。山手線上の「高輪」と「ゲートウェイ」の出会いには、“土地の詩”としての「マンションポエム」(大山顕)の響きがある。
仮にそれが現在の東京のリアリティだとしても、しかし私は、この駅名が「芝浜」であると女房に嘘をつかれてみたい。そして3年後の大晦日に、ほんとうは「高輪ゲートウェイ」だと打ち明けられても、夢から醒めずにいてみたい。
制作年:2019
素材:バックライトフィルムプリント、LED ライトパネル
サイズ:29.7 × 84.1 cm
作品画像クレジット(コピーライト):Haruya NAKAJIMA
配送までの期間:2週間前後
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